研究概要 |
本年度は、昨年度に引き続きカブトムシ幼虫に与える飼料中の多糖類を変化させ、それが腸内微生物叢へ与える影響を調べた。腐葉土でカブトムシ幼虫を飼育した飼育箱の残渣から2mmメッシュの篩を通過した画分を基材とし、これに、昨年の実験で幼虫の成長が確認されたセルロース(β-1,4-グルカン)、カードラン(β-1,3-グルカン)、カラスムギキシラン(β-1,4-キシラン)の粉末をそれぞれ別に5%添加した粉末飼料を調製した。さらに腐葉土と基材を対照飼料として用意した。各試験飼料に腐葉土で飼育したカブトムシの3齢幼虫6個体を個別に入れて飼育したものを1群とし、36日間飼育した。飼育終了後、幼虫を解剖して中腸と後腸の内容物から総DNAを抽出し16S rDNAをT-RFLP用蛍光プライマーを用いてPCR増幅し、1000pbの増幅断片を制限酵素Bs/Iで消化し、そのプロファイルを測定した。得られたT-RFLPプロファイルは、ヒト腸内フローラデーターベースを用いて解析し、含まれる細菌の分類群を推定した。その結果、中腸では、セルロース、カードランを添加した場合、Lactobacillales目が顕著に優占化したのに対し、キシランでは7600TUに出現する未同定の菌が優占しており、腐葉土と類似した菌叢を示した。後腸ではBacteroides属とClostridium属が優占化する傾向は飼料の組成によらず共通しているが、Clostridium属のcluster構成がセルロースとカードランでは異なっていた。キシランを添加した場合、Bifidobacterium属が後腸で優占化する傾向が見られた。添加した多糖類の構成単糖がセルロースとカードランがグルコースであるのに対し、キシランではキシロースであり、腐葉土を飼料とした幼虫の中腸内容物の不溶性多糖類の構成単糖はキシロースが最も多いことから、摂取する多糖類の構成単糖の組成がカブトムシ幼虫の腸内細菌叢に影響していることが示唆された。
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