研究概要 |
本研究は、長伐期施業が、生物多様性に与える影響とそのメカニズムを明らかとすることを目的としている。長伐期施業は、大径材生産や良質材生産のための施業方法として実施されているが、本施業の生物多様性への影響とそのメカニズムに関する研究は、十分ではなく、早急に研究が必要と考えている。 北部山岳地帯に広く造林されているカラマツ林内で、最も大きな生物群(目)といわれる甲虫目を対象としそ、長伐期施業が生物多様性に与える影響について調査を行っている。本年度は、本研究課題(3年間)の1年目であり、調査地の設定、最も重要と思われる甲虫多様性調査の約半分、および、環境要因調査の約1/3を実施した。 カラマツ長伐期施業林(高齢林)及びカラマツ通常施業林(壮齢林)にそれぞれ昆虫トラップを設置し、甲虫を回収した。その中から、カミキリムシ科、キクイムシ科、コメツキムシ科、ゾウムシ科、ハムシ科、ナガクチキムシ科、ベニボタル科を選別し、同定した。また、平方枠内の植物種数、花の数、キノコの数を調査した。 捕獲した甲虫は、7科の合計で、4,842個体、178種で、カミキリムシ科が種数、ゾウムシ科が個体数でそれぞれ最も多かった。長伐期施業林と壮齢林の比較では、カミキリムシ科種数とハムシ科個体数が、長伐期施業林で壮齢林より有意に高かった。他の科では、長伐期施業林の方で高い科が多かったが、有意差は認められなかった。 環境要因と甲虫多様性の関係をさらに林分内の調査地点を増やし、それを加えて検討したい。また、甲虫の群集構造の違いについても今後解析していく。
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