本研究は、長伐期施業が、生物多様性に与える影響とそのメカニズムを明らかとすることを目的としている。長伐期施業は、大径材生産や良質材生産のための施業方法として実施されているが、本施業の生物多様性への影響とそのメカニズムに関する研究は、十分ではなく、早急に研究が必要と考えている。 北部山岳地帯に広く造林されているカラマツ林内で、最も大きな生物群(目)といわれる甲虫目を対象として、長伐期施業が生物多様性に与える影響について調査を行っている。本年度は、本研究課題(3年間)の2年目であり、研究の大筋の結果を得ることができた。 長伐期施業によりカミキリムシ科、ゾウムシ科、ハムシ科、ナガクチキムシ科で、種数もしくは頭数が増加した。高所、低所の比較では、低所で多様性の高い科が多かった。長伐期施業は甲虫多様性にプラスに働く可能性が高いと考えられた。また、高さ別の比較では低所で多様性が高い甲虫科が多かった。これは、低所では、土壌や下層植生、倒木等甲虫の生息場所が多いためと思われた。甲虫種構成は、壮齢林と長伐期林間、また、低所と高所間で異なっていた。植物種数(木本種数、草本種数)と甲虫の種数、頭数の関係ははっきりしなかった。しかし、木本で、DBHが10cm以上の木の種数、本数と、高所に生息する甲虫科の種数、頭数との間では、多くの場合、正の相関があった。長伐期施業は、甲虫多様性にプラスに働き、特に林冠部でその効果が大きいと考えられた。これについては、林冠部は壮齢林ではカラマツ以外の樹種は少なく、単調となっているが、長伐期施業林では天然生木が林冠に達するようになり、林冠の生態系がより複雑になるため、林冠の甲虫多様性が増加すると思われた。 今後は、開空度、林内枯死材量など環境要因の更なる調査を行い、環境要因と長伐期施業、甲虫多様性の関係を解析する予定。
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