本研究は、長伐期施業が、生物多様性に与える影響とそのメカニズムを明らかとすることを目的としている。長伐期施業は、大径材生産や良質材生産のための施業方法として実施されているが、本施業の生物多様性への影響とそのメカニズムに関する研究は、十分ではなく、早急に研究が必要と考えている。 北部山岳地帯に広く造林されているカラマツ林内で、最も大きな生物群(目)といわれる甲虫目を対象として、長伐期施業が生物多様性に与える影響について調査を行った。本年度は、本研究課題の最終年(3年目)であり、研究を完了させた。 本年は解析に、種数、頭数の比較にはWilcoxon's signed-rank test、及びsample-based rarefaction procedureを、種構成にはmultiple correspondence analysisを、環境要因と種数の関係にはPoisson regressionを用いた。 その結果、長伐期施業により種数・頭数は増加する傾向が認められた。特に林冠での増加が顕著であった。24の環境要因で、甲虫多様性に大きな影響を与えていたのは、DBHが10cm以上の侵入木の種数と本数および枯死材の質と量であった。林冠部は壮齢林ではカラマツ以外の樹種は少なく、単調となっているが、長伐期施業林では天然生木が林冠に達するようになり、林冠の生態系がより複雑になるため、林冠の甲虫多様性が増加すると思われた。甲虫種構成は、林冠の種構成は長伐期林の種構成と重なる部分が大きく、林床の種構成は壮齢林の種構成と重なる部分が大きかった。長伐期施業は、甲虫多様性にプラスに働き、特に林冠部でその効果が大きいと結論づけた。
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