研究概要 |
寒冷地において主要な造林樹種であるカラマツ(Larix kaempferi (Lamb.) Carr.)造林木を対象に,温暖化に伴う気候変動が肥大成長量や密度に及ぼす影響を解明することを目的とし,植栽されている上限(信州大学西駒演習林)・下限(信州大学構内演習林)・北限(九州大学北海道演習林)・南限(九州大学宮崎演習林)に近い地点に試験地を設定した。西駒演習林を除く,3試験地において,各30個体以上より,1個体につき2方向より成長錐コア試料を採取した。信州大学構内演習林,九州大学北海道演習林について,軟X線デンシトメトリにより年輪幅および年輪内密度を測定し,生育地を代表する時系列であるクロノロジーを作成した。近傍の気象官署における月平均気温,月降水量,月日照時間との関係を単相関により分析した。その結果,信州大学構内演習林,九州大学北海道演習林の両方において,年輪内平均密度は気温と正の相関を示した。年輪幅については,温暖化の正の影響と負の影響の両方が予測された。第二に,肥大成長期間および年輪形成過程を把握するため,各試験地において,定期的なナイフマーキングおよび葉の写真撮影を4月から10月にかけて行った。信州大学構内および西駒演習林における標高770〜1650mの間にて行ったナイフマーキング試料の観察を行ったところ,肥大成長および早晩材の移行は標高が上がるにつれて遅くなり,最下部と最上部では約1ヶ月間の差を生じていた。
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