研究概要 |
寒冷地において主要な造林樹種であるカラマツ(Larix kaempferi (Lamb.) Carr.)造林木を対象に,温暖化に伴う気候変動が肥大成長量や密度に及ぼす影響を解明することを目的とし,植栽されている上限(信州大学西駒演習林)・下限(信州大学構内演習林)・北限(九州大学北海道演習林)・南限(九州大学宮崎演習林)を対象として研究を行った。西駒演習林において,40個体より,1個体につき2方向より成長錐コア試料を採取した。西駒演習林,宮崎演習林について,軟X線デンシトメトリにより年輪幅および年輪内密度を測定し,生育地を代表する時系列であるクロノロジーを作成した。近傍の気象官署における月平均気温,月降水量,月日照時間との関係を単相関により分析した。その結果,年輪幅について,西駒演習林では気候要素との顕著な相関は認められなかった。宮崎演習林では,5月の最高気温との正の相関が認められた。年輪内平均密度について,両地点ともに夏期の気温と正の相関を示した。第二に,肥大成長期間および年輪形成過程を把握するため,各試験地において,定期的なナイフマーキングおよび葉の写真撮影を4月から10月にかけて行った。ナイフマーキングと打ち抜き法の比較を行ったところ,ナイフマーキング法による活動開始の確認は分裂開始後40日後に認められることがわかった。
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