研究概要 |
寒冷地において主要な造林樹種であるカラマツ(Larix kaempferi(Lamb.)Carr.)造林木を対象に,温暖化に伴う気候変動が肥大成長量や密度に及ぼす影響を解明することを目的とし,植栽されている上限(信州大学西駒演習林)・下限(信州大学構内演習林)・北限(九州大学北海道演習林)・南限(九州大学宮崎演習林)を対象として研究を行った。年輪幅および年輪内密度の気候応答について,4地点を比較したところ,宮崎を除いて年輪幅には前年夏季の気温が負に,足寄を除いて冬季の降水量が生に影響する影響する傾向が認められた。年輪内平均密度には,全生育地に共通して当年成長期の日照時間が正に影響していた。温量指数の増加に伴う高温の抑制的効果は認められず,温暖化に伴う肥大成長量や材質の顕著な変化は内と予想される。第二に,年輪形成過程を把握するための形成層活動槻測においては,ナイフマーキングと打ち抜き法の比較を行い,形成開始期の把握には打ち抜き法が,形成終了期の把握にはナイフマーキングが手来ていることを確認した。異なる標高における槻察を行った結果,開葉,分裂開始,二次壁肥厚開始日と標高の間には非常に高い正の相関があり,これら成長開始は気温による制限を高く受けていることが示唆された。一方,年輪幅や密度変動と春の気温との相関は,地点により異なっており,成長の早期開始が必ずしも成長量の増大に結びついていないことが示唆された。
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