研究概要 |
1.白色腐朽菌によるメフェナム酸およびジクロフェナクの分解と毒性除去 昨年度、白色腐朽菌Phanerochaete sordida YK-624株を用いて、抗炎症剤であるジクロフェナク(DCF)およびメフェナム酸(MFA)を処理した結果、効率的なDCFとMFAの減少が認められ、甲殻類に対する毒性も除去されることを確認した。 そこで本年度は、代謝物の構造決定を試み、DCFの代謝物は4'-hydroxydiclofenac、5-hydroxydiclofenacおよび4',5-dihydroxydiclofenacであることを明らかにした。さらに、MFAは3'-hydroxymethylmefenamic acid、3'-hydroxymethyl-5-hydroxymefenamic acid、3'-hydroxymethyl-6'-hydroxylmefenamic acidおよび3'-carboxymefenamic acidに変換されることも見出した。以上の結果から、DCFおよびMFAは水酸化によって代謝されていることが判明し、リグニン分解酵素の産生も全処理期間を通してごく僅かであったことと合わせて考えると、両物質の代謝には菌体内酵素であるシトクロムP450(CYP)の関与が推察された。そこで、CYP阻害剤を添加したところ、DCFおよびMFA減少の抑制が認められ、この結果はCYPの関与をさらに強く示唆した。 2.リグニン分解酵素によるカルバマゼピンの分解 抗てんかん剤のカルバマゼピン(CBZP)については、リグニン分解酵素処理による分解は認められないと報告されてきたが、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HBT)を共存させるラッカーゼ処理(48時間反応)においては約60%のCBZP除去が認められた。
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