研究概要 |
1. リグニン分解酵素によるカルバマゼピンの分解とその分解産物 カルバマゼピン(CBZP)は抗てんかん薬として使用されているが、現行の下水処理による除去率は10%以下であり、極めて生分解を受けにくいとされている。 CBZPをリグニン分解酵素で処理した結果、ラッカーゼ(Lac)単独処理での分解は認められなかったが、Lac-HBT処理においては24時間後に約22%の減少が確認され、MnP処理においても約14%の減少が認められた。なお、Lac-HBT処理時におけるLac活性の減少挙動を追跡したところ、処理8時間後に残存するLac活性は10%以下であり、Lacの失活が認められた。そこで、処理8時間毎にLacおよびHBTを新たに添加する繰り返し処理を試みた結果、処理48時間で約60%のCBZP除去率が得られた。また、Lac-HBT処理において分解産物の蓄積が認められ、それらは9(10H)-acridoneと10,11-dihydro-10,11-epoxycarbamazepineであった。 2. リグニン分解酵素によるトリクロサンの分解と無毒化 ラッカーゼ(Lac)およびマンガンペルオキシダーゼ(MnP)を用いて、抗菌剤であるトリクロサン(TCS)を処理した結果、MnP処理がTCS分解に最も優れており、1時間のMnP処理でほぼ完全な分解が認められた。また、TCSの分解に伴って、藻類、甲殻類および細菌(大腸菌および枯草菌)に対する毒性(生育阻害)も除去された。
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