本年度は、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)の活性センターの化学構造に相当するヘマチンを固定化した6-アミノセルロース(6-ADC)誘導体(6ADC-Hematin)のキャラクタリゼーションを行なった。ヘマチンの置換度は、元素分析などでは測定が困難であったが、UV法(ヘマチンの400nmのSoret吸収帯)を用いて評価したところ、0.06と見積もられた。低置換度の理由は、固定化反応が不均一反応であるためと思われ、今後、均一反応系の構築が必要である。 次に、6ADC-hematinの酵素活性(フェノールの酸化活性(特に、シナピルアルコールの酸化活性))について調べたところ、(1)6ADC-hematinは、酸性条件下でシナピルアルコールの酸化活性を有すること、(2) 6ADC-hematinの酸化活性は、反応前に100℃3時間で処理しても、維持されること、(3)6ADC-hematinの酸化活性は、広い温度領域で安定であること、(4)6ADC-hematinの酸化活性は、過剰の過酸化水素存在下でも、ある程度維持されることなどが判明し、調製した6ADC-hematinは、HRPと比較して、使用範囲の広いバイオミメティック触媒であることが示された。次いで、6ADC-Hematin触媒によるシナピルアルコール重合において、生成物であるシンリンガレジノールの光学異性体比率に対する影響も検討したが、HRP触媒による重合の場合と、有意な差は認められなかった。また、ヘマチンをキトサンに固定化した誘導体(Chitosan-Hematin)の調製も行った。
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