研究概要 |
スギはわが国固有の樹種であり,建築材や生活用具などに利用され,わが国独特の「木の文化」を支えてきた代表的な木材である。スギの利用はこれまで製材用がほとんどを占めているが,近年では,構造用合板や中大断面集成材,造作用LVLや構造用LVLなどの新たな利用も試みられている。 本研究は今後利用発展がおおいに期待されている上記構造用スギLVLに着目し,その被削性を明らかにする目的から,とくに丸鋸加工におけるチップソーの刃先摩耗特性を明らかにするものである。平成20年度の研究では構造用スギLVLの丸鋸加工におけるチップソーの刃先摩耗をスギならびに各種木質材料(ラワン合板(Type1,Type2),針葉樹合板,パーティクルボード,MDF,OSB)の切削の場合と比較した。実験結果から,チップソー(刃先角60゜,逃げ角15゜,横すくい角15゜)の刃先摩耗経過と切削消費電力の変化は,いずれの被削材の場合も切削材長の増加に伴いほぼ直線的に増加し,また刃先摩耗の進行はパーティクルボード>MDF>ワラン合板(Type1)>OSB>ラワン合板(Type2)>スギLVL>針葉樹合板>スギの順であった。このように,スギLVLの丸鋸加工ではチップソーの耐摩耗性はスギと針葉樹合板に比べると劣るものの,針葉樹合板以外の木質材料に比べると刃先摩耗の進行が極めて遅いことがわかった。 以上のようなスギLVL,スギと種々の木質材料の丸鋸加工におけるチップソーの刃先摩耗比較は既往の研究ではこれまで全く見られず,本研究によって刃先摩耗から見た構造用スギLVLの他材料と比較した被削性を明らかにすることができた。
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