研究概要 |
本研究では、天然から選抜した石油分解菌(選抜菌)を用いて、PAHs(クリセン,ベンゾピレン,フェナントレン)の分解を行い、分解機構及び分解に関与する酵素を明らかにするとともに、選抜菌を用いたPAHs(クリセン,ベンゾピレン)汚染土壌の浄化を行い、浄化に及ぼす栄養源,界面活性剤添加、空気導入等の影響を調べ、浄化条件を調べた。また、選抜菌からの微生物製剤の調製を試みるとともに、数種の植物を用いたPAH(クリセン)汚染土壌の浄化も行った。 1.天然から選抜した新規で強力な石油分解菌(選抜したS133菌)を用いて、PAHs(クリセン,ベンゾピレン,フェナントレン)の生菌分解を行い、それぞれ24%,36%30%(1mM,30日)分解した。また、分解に及ぼす栄養源、界面活性剤添加の影響も明らかにした(これらの添加により分解率は約1.5〜2.5倍向上)。さらに、PAHsの分解に関与する酵素(ジオキシゲナーゼ及びリグニナーゼ)を明らかにするとともに、分解生成物の単離同定からこれらの分解機構を解明した。 2.選抜菌を用いてPAHs(クリセン)汚染土壌の浄化を行い、液体培養した菌糸懸濁液を土壌に添加(0.5〜1.5%,対土壌)した場合、最高46%(1ppm,対土壌,30日間)のPAHを分解できた。また、S133菌の固体培養物を土壌に添加(10〜15%,対土壌)した場合、最高77%(1ppm,対土壌,30日間)のPAHを分解できることを見出した。栄養源、界面活性剤添加の添加により分解率はさらに向上した(約1.2倍)。分解率をさらに高めるための浄化条件については精査中である。なお、ベンゾピレン汚染土壌の浄化条件について検討中である。 3.三種の担体(粒状活性炭,ゼオライト,セラミックス被覆粒状炭)にS133菌を担持させた微生物製剤を調製した。そして、これらの製剤の土壌中での菌糸成長及び酸化分解酵素生産能からその性能を評価した。そして、この製剤によりクリセン汚染土壌が浄化できることを見出した(60%,30日間)。また、酵素製剤を作成するため、S133菌からの酵素を包括剤により酵素が固定化出来ることも見出した。 4.二種の植物(ハギ、スーダングラス)によるクリセン汚染土壌(1ppm)が浄化できることを見出した(23%,17%,2ヶ月間)。土壌中のデヒドロゲナーゼ活性(微生物の活性を示す)及びペルオキシダーゼ(酸化分解活性)の関係から、植物は土壌中の微生物を活性化する何らかの物質を産出しこれによりPAHが分解されるものと推測された。
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