H21年度は、昨年の実験で十分に明らかにできなかった塗布量の限界点、及び被着材の表面荒さが接着性能に及ぼす影響などについて明らかにするべく実験を行い、以下のような結果を得た。 ・ 同じ塗布液量における樹脂実質量を少なくするため、樹脂を希釈する方法について検討を行った。H20のインクジェット塗布(IJ塗布)が可能な接着剤条件にするため、既に2-3倍程度の希釈を行ったものについて、さらなる希釈を試みたが、市販のフェノール樹脂接着剤(PF)では、白濁が生じるなどの問題があり、H20の条件を大きく上回る希釈条件での塗布は困難であることが明らかになった。 ・ 実態顕微鏡及び走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、固形分約5g/m^2で塗布した接着層の顕微鏡観察を行った。実態顕微鏡ではPF塗布部分の色変化により接着層が観察されたが、具体的な接着部分は観察できなかった。SEM観察では、被着材の組織構造の不連続性によって接着層と思われる部分は観察できたが、そこに明瞭な接着剤の痕跡は見られず、IJ塗布による接着剤の存在形態は、木材の乾燥時に抽出成分が作る膜と同程度であると考えられた。 ・ 南洋材(ラワン類)の1.5mm厚ロータリー単板を用い、両面塗布で接着層あたりの塗布量約6g/m^2(固形分)、圧締圧力1.5MPa、圧締温度140℃、圧締時間10min(H20年度のカバ実験と同条件)にて3ply合板型試験片を作製し、引張せん断試験法にて接着試験を行った。結果、IJ塗布に平均接着強度は0.69MPa、接着層当たり77g/m^2塗布したコントロール0.82MPaと比べ、15%程度低い値となることが明らかになった。 ・ 異種接着剤としてイソシアネート樹脂接着剤をIJ塗布に適用するために、希釈溶剤や希釈倍率など、主として接着剤面から種々の方法について検討を行ったが、現時点では安定的に塗布する方法が得られていない。
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