研究概要 |
抗腫瘍活性に富むが水に難溶であるβ-1,3グルカンを、高温高圧水による加水分解反応によってオリゴ糖に低分子化し、水可溶化させる技術を検討した。抽出には、エスプレッソコーヒーの製造に用いられるマキネッタ抽出法を適用した。この抽出法によれば、β-1,3グルカンは低分子化して水可溶となると同時に加熱系外に排出されるため、過度の低分子化や熱分解を抑えることができる。 1.安定な抽出方法の確立 マキネッタ抽出器の内部圧力は、圧力保持体である粉体試料の圧搾状態に左右され、抽出温度のコントロールが困難な場合が多い。そこで、種々の実験用濾紙を圧力保持体として併用することを考案し、抽出温度のコントロールと極少量の試料からの抽出が可能となった。 2.食用キノコからのβグルカン抽出とその抗腫瘍活性 食用キノコ類であるブナシメジ、エリンギ、シイタケ、バイリングを原料としたところ、いずれのキノコからもブクリョウと同様にβグルカンを高収率で抽出することができた。これらのヒト結腸癌細胞(caco-2)への抗腫瘍活性を検討したところ、ブナシメジからの抽出液は、ブクリョウ抽出液や市販のβグルカンよりも強い抗腫瘍活性が確認された。また、それより弱いが、エリンギからの抽出液にも活性が見られた。極めて簡易な機構の抽出装置で安全性が高く、さらには原料が食品であるため薬事法に抵触せず、本来食品であるため過剰摂取による副作用も少ないものと期待される。 3.他の天然成分抽出への適用 そのほか、樹皮からの水可溶性タンニンの抽出、生薬からのベルベリンやグリチルリチン酸の効率的抽出の適用性についても検討した。いずれの目的物質に対しても、マキネッタ抽出法は高い抽出効率と、高活性溶液を抽出可能であることが明らかとなった。
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