研究概要 |
産業上重要な漁獲対象種の一種であるアカガレイの卓越年級群発生機構の解明と, その発生予測技術を開発するために, 北海道噴火湾において, 北海道大学水産学部附属練習船うしお丸を用いて6回にわたり(2008年4月15-16日, 12月9-10日, 2009年1月17日, 2月10-11日, 23-25日, 3月12日)アカガレイ卵・仔魚採集と海洋環境調査を実施した。卵は表層に, 仔魚は水深15m層に多く出現した。産卵末期にあたる4月の15m層の平均水温は3.6℃, 平均塩分は32.63を示し, 塩分33.3以下の沿岸親潮に覆われていた。プランクトンネットの鉛直曳採集による卵密度は平均2.1個体/m^2, 仔魚は平均0.3個体/m^2を示し, 相対的に低かった。耳石日周輪から逆算された過去の仔魚体長と日齢の関係は線形式の当てはまりが良く, 36日齢までの平均成長率は0.192±0.0211mm/日(±標準偏差)と見積もられた。12月から2月中旬までは湾内の平均水温は9.8℃から3.9℃まで低下し, 2月下旬と3月中旬は水温変化が小さかった(ともに3.4℃)。平均塩分は12月から3月まで33.97から33,43まで徐々に低下し, 湾内は津軽暖流から変質した冬期噴火湾水に覆われ, 33.3以下の沿岸親潮の流入は認められなかた。産卵初期にあたる12月には, プランクトンネットの鉛直曳採集によって卵はわずかに採集されたが(平均1.9個体/m^2), 仔魚は採集されなかった。1月中旬には卵・仔魚ともに高密度化し(卵 : 平均65.4個体/m^2 ; 仔魚 : 9.7個体/m^2), 1月下旬には仔魚密度はさらに高くなった(卵 : 平均77.7個体/m^2 ; 仔魚 : 22.1個体/m^2)。従ってアカガレイの産卵と仔魚出現の盛期は1月以降と判断された。
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