研究課題
エゾバフンウニの生殖周期は北海道沿岸において、日本海型、オホーツク海・東部太平洋型、噴火湾・南部太平洋型の3タイプに区分され、海域間で移植しても原産海域の生殖周期は少なくとも3年間は維持される。タイプが異なる海域における本種個体群間の遺伝学的な分化の有無を、東北太平洋における生殖周期を含めて明らかにする。北海道の生殖周期を異にする3海域と東北太平洋の計7地区から各約50個体を入手し、顎骨伸筋からDNAを抽出し、mtDNAのCOI領域361塩基およびNDI領域262塩基の配列を決定し、地区間の変異性の有無を検定した。また、2007年11月から翌年10月までのほぼ毎月1回、宮城県大谷沿岸の水深0.5~1mでエゾバフンウニ約10個体を採集した。そして、生殖巣指数(生殖巣重量×100/体重)を求め、成熟段階を肉眼により未成熟期、成熟期、放出期に区分した。エゾバフンウニの生殖周期は、現在の環境が形成された1万年前以降に成立した海流、水温およびコンブ属褐藻の分布に対応していた。しかし、mtDNAの配列の変異性には海域間で有意な差は認められず、出現数の多いハプロタイプは4海域以上で共有され、海域による特異性は認められなかった。したがって、2領域の塩基配列にもとづくならば、現在のエゾバフンウニには海域毎に遺伝学的に独立した個体群が生じるほど地史的時間が経過していないと考えられる。大谷における生殖周期は、生殖巣指数が2008年3月から9月の18.6のピークへと上昇した後、10月に5以下へと急激に低下し、年1回秋産卵の北海道日本海型に類似した。しかし、南部太平洋型である1~4月に成熟期をもつ個体が20%の頻度で出現した。このことは、東北太平洋沿岸におけるエゾバフンウニ個体群は北海道日本海型と南部太平洋型が混在している可能性を示している。
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Journal of Shellfish Research VOL.28
ページ: 939-946
ページ: 877-882
http://www.agri.tohoku.ac.jp/agri-field/010.html