ホタテガイ軟体部廃棄物全体(原料)を用い、処理量200kg単位で下記の実験を行った。 1 本研究グループでこれまでにラボスケールで確立した洗浄方法に従って、出発原料を2倍量の弱酸水溶液で4回洗浄した。その結果、未処理原料中のCdは5.5mg/kgであったが、洗浄後に得られた固形分中のCd濃度は、0.30〜0.37mg/kgであった。一方Cdを0.7〜0.8mg/kg含む洗浄合液は出発原料の4.5〜5倍量余り生じた。さらに洗浄済固形物の回収率は10%以下になってしまった。このことから原料をそのまま処理する場合には、Cdを確実に除去でき、手作業でウロを取り分けなければならない問題も解決できた。しかし、高濃度にCdを含む洗浄合液が多量に生じる問題、Cdを低減した固形分の回収率が低いなどの問題が、本システムの簡易化を阻害する恐れがあるという欠点が残されていた。 2 上記の欠点を克服するため、まず原料の水分を加熱により減少させた後、固形分を洗浄する方法を検討した。試料にその1/10量の水を加え、60℃になるまで攪拌・加熱した。ザルおよび網袋で水を絞り取った。得られた固形分をその1〜2倍の1又は2%クエン酸で3回ずつ洗浄した。その結果、1)Cd量:未処理原料は6.92mg/kgで、洗浄物は0.66〜1.42mg/kgであった。2)N1%当りCd濃度 : 未処理原料は5.13ppmあったが、洗浄物はいずれも0.8ppmより低く、飼料ならびに肥料の許容基準を満たした。3)洗浄乾燥物の回収量は31〜40kg/t.生原料であった。4)洗浄合液量は出発原料の1.3〜2倍に収まった。5)Cd濃度が低い時期では1倍量の2%クエン酸で十分だったが、高い時期ではその2倍量程度が必要になると思われる。ここで明らかになった洗浄条件を用い、次年度は引き続いて試料の季節変動に対応する実用条件を検討する。これと同時に、洗浄合液のより合理的な処理方法を検討する。
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