昨年度と同様にホタテガイ軟体部廃棄物全体(原料)を用い、以下の検討を行った。 1)高濃度Cdを含む季節の原料を試料とし、Cd濃度の周年変動に対応できる条件の検討:(1)試料に1/10量の水を加え、60℃で加熱処理した。(2)水を絞り取った残滓を更に出発原料の1/6量の水で2回洗浄した。(3)得られた固形分を2倍の1~2%酢酸(クエン酸)で2回ずつ洗浄した。その結果、(1)Cd濃度:未処理試料は7.27mg/kgで、弱酸洗浄物は0.27~0.8mg/kgであった。(2)洗浄合液量:出発原料の2.2~2.3倍であった。(3)弱酸洗浄乾燥物(水分5%):回収量は53~65kg/t原料、N%含有量は11.3~12.2%、Cd濃度は1.03~2.83ppm、Nl%当りのCd濃度は0.09~0.23ppmであった。この条件はどの季節の試料にも十分に対応できると思われる。 2)洗浄済物の乾燥処理条件の検討:洗浄済物を60℃で1~5時間送風乾燥した。その結果、60℃で5時間送風乾燥すると、水分が80%から10%以下になった。乾燥時間を長くするにつれ、PV・AVが上昇したが、PVの最大値は15meq/kg、AVの最大値は7mg/gで、何れも安全基準内であった。 3)洗浄合液からCdを分離する条件の検討:(1)1%有機キレート剤テルトール20と1、3、5、10%硫酸第二鉄を合わせて処理方法と、(2)キレート繊維を4、6%加え、5時間振盪処理方法の二つの方法で行った。その結果、(1)の場合では、99%以上のCdがスラッジに移行し、スラッジはそのまま最終処理場に埋設できる。ただ、洗浄合液中の窒素が5~30%程度損失と、水分75%以上のスラッジが11%~36%生じたという欠点が残されていた。(2)の場合では、94%以上のCdが除去され、窒素の損失がほとんどなく、処理済液の安全性も高い。しかし、キレート繊維自体の価額が高いという短所があった。ただ、使用済みキレート繊維は再生後、複数回再利用できることをすでに確認した。全体の処理コストを抑えるために、引き続きキレート繊維の使用条件を検討する予定である。
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