研究概要 |
本研究は,次の5つを研究活動の柱としている。1)Monitoring,2)Information,3)Application,4)Education,5)Communication。これらの中で,1)Monitoring(出現珪藻相調査と主要分類群の分類学的および生態学的解析)と2)Information(データベース構築と情報公開)をこの研究期間内で遂行することを目的とした。平成20年度は,主に以下の4点について行った。 (1)北海道知床らうす深層水施設に出現した付着珪藻相の通年調査より出現種の形態学的情報を収集し,他施設との比較検討を行った。その結果,深層水由来の珪藻の生態的特徴を知る上で重要な資料を得,深層水に対する付着珪藻の生物指標的アプローチの可能性を得た。 (2)海洋深層水施設内試料と天然試料(岩礁,砂地及び海藻・海草付着)との分類学的及び形態学的な比較検討を行った。具体的な観察対象分類群はAchnanthes, Nitzschia, Caloneis, Plnnularla, Cocconeisである。 (1)と(2)の研究成果の一部は,国内学会及び論文誌に公表発表した。 (3)静岡県駿河湾深層水利用研究施設から得られた珪藻の室内単種培養による種(株)の保存とそれらの特性評価の実施,分類学的アプローチによる帰属の検討を行った。その結果,単種培養に成功した珪藻は無縦溝珪藻のRhaphoneis crinigera Takanoと同定された。しかし,光学及び電子顕微鏡による詳細な観察および分子系統解析により,本種に対して新属を設立し,そこに新組合せすべきであるという結論を得た。 (4)三重県尾鷲市海洋深層水研究所の試料を解析し,付着珪藻相及び出現種の形態学的情報を収集し,他施設との比較検討を行った。その結果,高知県室戸海洋深層水施設の珪藻相と高い類似性を示した。 (3)と(4)の研究成果は,2009年の国内学会及び論文誌に公表発表する予定である。
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