研究課題/領域番号 |
20580199
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
水産学一般
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
片桐 孝之 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 助教 (50361811)
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研究分担者 |
延東 真 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (80128355)
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連携研究者 |
舞田 正志 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (60238839)
二見 邦彦 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 助教 (00513459)
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研究期間 (年度) |
2008 – 2010
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キーワード | ガングリオシド / Streptococcus iniae / 細菌性疾病 |
研究概要 |
日本の最近の魚類養殖における多種類化傾向が進み、それに伴って予防も対策もできない魚病が発生している。魚種や疾病に限定されない新たな魚病技術を開発することが業界からの要望として強く発信されている。本研究では、感染症のなかでも細菌感染症に焦点を絞り、その対策の一助とするために以下の研究を行った。 病原菌は宿主の細胞表面に存在するスフィンゴ糖脂質の糖鎖部を認識して結合し、感染を引き起こす。また、病原菌自身も表面に糖鎖を持っており、宿主の免疫監視機構から逃れる、又は糖鎖を介した宿主との細胞間認識により、感染に役立てている。その為、細菌性疾病の予防を考える上で、欠かせない物質である。しかし、魚類における病原菌とスフィンゴ糖脂質に関する知見は乏しいのが現状である。本研究では多くの病原菌の受容体として知られるスフィンゴ糖脂質の一種の、ganglioside asialo-GM1(GA1)とアユ(Plecoglossus altivelis)においてβ溶血性連鎖球菌症を引き起こすStreptococcus iniaeをモデルとして病原菌とスフィンゴ糖脂質の関連性を検討した。 S.iniaeがGA1に対し、結合能を持つかTLC-overlay assay法を用いて検証した。その結果、GA1を展開したTLCプレートをS.iniaeの菌液に浸した試験区ではGA1が展開された位置にスポットが検出され、S.iniaeの菌液に浸さなかった試験区ではスポットが検出されなかった。この結果から、S.iniaeがGA1に対し結合能を持つことが示唆された。 次に、アユの脳内においてGA1が存在するか、アユの脳からフォルチ分配法を用いて抽出したスフィンゴ糖脂質をTLCで展開し、GA1標準品のRf値と比較をした。その結果、アユの脳からは4種類のスフィンゴ糖脂質が検出され、その1つがGA1であった。 さらに、アユの臓器におけるS.iniaeとGA1の分布の関連性を検討した。浸漬感染法によりS.iniaeに感染させたアユの脳、腸、心臓から凍結切片を作製し、S.iniae及びGA1に対する免疫組織染色を施した。S.iniaeに対する免疫組織染色では、脳膜に浸潤した炎症細胞付近にS.iniae像が観察され、GA1に対する免疫組織染色では、脳膜内側の神経線維と顆粒層の小神経細胞にGA1が確認された。しかし、腸及び心臓にはGA1の存在は認められなかった。 つまり、S.iniaeはGA1に結合することから、両者に関連性は認められたが、臓器内での分布には直接的な関連性は認められなかった。しかし、S.iniaeにより特異病変が作られる脳に、GA1が多量に存在することから、脳まで伝播したS.iniaeはGA1を介して脳内感染を引き起こすと考えられ、魚類においても病原菌とスフィンゴ糖脂質は深く関連していると考えられた。
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