カレイ類では白化や両面有色と呼ばれる形態・色彩異常の個体が、種苗生産現場では多い時には80%以上も出現し、カレイ類の種苗生産を進める上での最大の障害となっている。本研究は、このような形態異常個体の出現を防除するために、形態異常の出現機構を変態生理にもとついて明らかにするとともに、最適な成長速度を具体的に提案することを目的とする。 変態後の形態と変態前の成長履歴の関係を調べるため、ヌマガレイ、マコガレイ、及びババガレイにおいてALCにより変態前に耳石標識をおこなった。マコガレイではほぼ全数が正常個体へと変態してしまったが、ヌマガレイ(採集取り上げ尾数300個体以上)とババガレイ(同100個体)では、正常と白化とがほぼ1:1で出現し、意味のある分析が可能なサンプルが得られた。しかし、今年度の報告書には分析が間に合わなかった。 ホシガレイを用いて甲状腺ホルモン投与時の体長が変態後の形態におよぼす影響を検討した。ALCにより孵化後26日(変態前、Eステージ)に耳石標識をおこなうと同時に甲状腺ホルモン(チロキシン、T4)の浸漬を開始した。耳石の標識経からT4投与開始日の体長を逆算すると、正常に変態した個体では8.9mmを中心とする一峰性の分布を示したが、両面有色となった個体では8.5mmと9.3mmの2つのピークを持つ二峰性となった。このことは、ホルモン投与開始時に、体長の大きな個体と小さな個体とが両面有色へと変態したことを示す。 細胞培養系を用いて甲状腺ホルモンの色素細胞に及ぼす作用を明らかにする計画を立てていたが、主にマンパワーの不足から今年度は培養実験を行うことが出来なかった。
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