I型インターフェロン(I-IFN)はウイルスに対する免疫反応において必須の役割を果たすとともに、広く細菌感染においてもマクロファージやナチュラルキラー細胞の活性化、Th1反応の誘導といった多様なメカニズムによって免疫賦活作用を発揮する重要なサイトカインである。本研究では、コイからI-IFN遺伝子を分離し、構造および機能について解析を行った。 I-IFN遺伝子を分離するために、免疫賦活剤で刺激したコイの頭腎からcDNAライブラリーを作製した。次に、既知のI-IFNの遺伝子配列を基に縮重プライマーを作製し、cDNAライブラリーを鋳型にPCRを行いI-IFNのクローニングを試みた。また、RACE法によってコイのI-IFNのアミノ酸をコードする領域の塩基配列を決定した。さらに得られたコイのI-IFNのアミノ酸配列をもとに、他の魚種のI-IFNとの相同性、および系統解析を行った。その後ゲノムのイントロン、エキソン解析を行い、さらにコイのI-IFNタンパク質を合成、精製し、免疫賦活剤や合成したコイのI-IFNタンパク質で免疫刺激した頭腎におけるI-IFN誘導物質の発現動態の解析を行った。 二つのI-IFN遺伝子(CL1、CL2)をクローニングした。コイのI-IFN遺伝子は183〜186個のアミノ酸残基から構成されていることが確認された。二つのアイソフォームのI-IFN遺伝子の相同性は75.2%を示した。ゲノム構造は、5つのエキソンと4つのイントロンから構成され、他の硬骨魚類と類似していた。免疫賦活剤の刺激により、I-IFN遺伝子(CL2)の発現量が増加していることが確認された。I-IFN誘導物質の発現動態は、免疫賦活剤の刺激では24時間後にI-IFN誘導物質(Mx)の発現量が最大になり、I-IFNタンパク質の刺激では、一時間後にMxの発現量が最大になり、その後減少が見られた。
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