研究概要 |
本年度は、昨年度に続けてマイクロサテライトマーカーを作成した。また、これらのマーカーを用いて、在来集団の遺伝特性に放流がどのように影響するかを検証するために,在来集団(津田と四海)と放流集団の遺伝組成および遺伝的多様性の差異について検討した.さらに,放流が行われていない福井県,岩手県および愛知県で漁獲されたタケノコメバルも解析に用いた.5海域の野生集団のうち津田と四海の間ではFst値に有意差がみられなかったが,それ以外の全ての組み合わせで有意差が認められた.He値は瀬戸内海が0.609と最も低く0福井が最も高かった.一方,放流集団のHe値は0.518と瀬戸内海の在来集団よりも低く,Fst値は2004年放流群と在来集団との問に有意差がなかったが,その他の年の放流群との間には有意差が認められた.各年級の放流群を込みにした場合でも,津田で漁獲された放流集団は在来集団と有意差が認められた.放流集団には親魚の選択から放流までの間に遺伝的浮動や人為選択がかかっており,上記の結果はその影響によると考えられ,遺伝的特性のモニタリングを続けることが不可欠である.次に、人工受精における精子活性を検討するためにタケノコメバル輸精管精子の運動時間を調べたところ、人工精漿を希釈してから30秒後に運動精子率が最も高くその後減少する傾向があり、本種の精子は射精されてからすぐに運動を開始することが分かった。異なるイオン濃度および浸透圧におけるタケノコメバル輸精管精子の運動性を調べたところ、運動精子率は200mOsm/kgと体内の浸透圧付近で最も高かった。このことは、タケノコメバルの産卵様式が体内受精であることを反映していると思われる。次に、pHの影響を調べたところ、pH 9.0、8.5のややアルカリ性で高い運動性を示し、卵巣液のpHとの関係が示唆された。
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