本年度は、これまで放流されたタケノコメバル稚魚の遺伝的多様性への影響と人工授精技術の確立を目的とした。 在来集団および過去に放流されたタケノコメバルのフィールド採集:昨年から引き続きフィールドでタケノコメバルを採集し、開発したマイクロサテライトマーカーを用いて解析を進めている。近年、放流を行っている小豆島四海ではタケノコメバルの漁獲が増加する傾向にあり、種苗放流との関連が示唆された。フラグメント解析結果は継続して解析中である。 人工授精における精子賦活の必要性の検討と精子の短期保存技術開発:人工授精の際に尿で精子賦活を行った。尿のpHとイオン濃度は時期によって異なり、特にpHとK^+濃度に差が認められた。尿では11月16日のみ高い精子活性を示し、他の時期では精子活性が認められなかった。また、pH、K^+濃度の高い賦活剤では精子活性が認められ、低い賦活剤では認められなかった。5種類の賦活剤で人工授精を行った結果、海水、1/3海水、卵巣腔液では精子活性が認められず、仔魚も得られなかった。一方、pHとイオン濃度が近似していたControlと精漿では精子活性が認められ、仔魚を得ることができた。これらの結果から、人工授精には精子を賦活させることが必要であり、賦活には適切なpH、K^+濃度が必要と考えられた。短期保存のために昨年に続き精子凍結保存を試みた。その結果、凍結保存条件として、凍結保存液には10%DMSO/FBSを用いて精液を希釈した後、直ちに液体窒素液面からの高さを10cmに設定し、-50℃まで冷却し、液体窒素に浸漬した時に最も高い運動精子率が得られることが明らかになった。
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