研究概要 |
海の牧草とよばれている有用な海産植物プランクトンSKeletonema costauum(珪藻)は、2005年および2007年に、D.Sarnoraらによって、DNAと電子顕微鏡を用いた新しい同定法が提案された結果、本種は新種を含め、8種で構成されていることが明らかになった。本種は水産分野のみでなく環境分野においても極めん重要な種類であるため、D.Sarnoraらの同定方法の検証と新しい同定法を用いて分類されたSKeletonema属各種の生理生態的研究が必要となった。 しかし、D.Sarnoraらの同定法は分子生物学的同定手法が煩雑であったため、まず、作業が簡便で作業時間も短縮できるよう検討を試み、手法を改善した。この方法を用いて、北九州市洞海湾に出現するSKeletonema属の種多様性と季節的消長を毎月1回、2年間にわたって調査した結果、D.Sarnoraらの同定法は、2・3の問題点は見られたものの、概ね正確であることが確認された。また、洞海湾には7種のSKeletonemaが出現し、種多様性が非常に高いこと、SKeletonema各種には出現に季節性があること、6種のSKeletonemaが赤潮構成種となること、7種のSKeletonemaがが遷移しながら出現することにより従来S.costatumと呼ばれた種類が周年にわたって出現できていたことが、我が国で初めて確認された。また、洞海湾から単離された7種についてSKeletonemaの温度・照度増殖特性を培養実験で調べた結果、それらの増殖特性は野外での出現特性によく対応してきることが確認された。 現在、これらの研究成果は次の2つの英文誌に投稿中である。 European Journal of Phycology "Effects of temperature and irradiance on growth of seven Skeletonema species isolated from Dokai Bay, southern Japan" Journal of Oceanography "Species Diversity and Seasonal Succession of the Genus Skeletonema (Bacillariophyceae)in Eutrophic Dokai Bay, Japan"
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