胃内容分析は小型歯鯨類の食性研究に多く用いられているが、この方法では単位時間当たりの餌消費量を推定することは困難である。しかし、餌生物の消化時間と消化段階が明らかになれば単位時間当たりの餌消費量の推定が可能となるだろう。今年度の計画では、昨年実験の例数が十分確保できなかったマサバー尾の消化速度の測定と、トビウオとサバのヒレを用いて人工消化液によるコントロール下試験管内での消化段階の進行を調べた。実験にはHCl、ペプシン、Na_2CO_3(緩衝材)から成る人工消化液を36~38℃に温め、pHは1.5~2.0の間に保った。ヒレの重量を一定時間毎に量ったところ、両種ともヒレの重量は時間経過とともに減少したが、ヒレ残存率(ヒレ重量/元の重量×100)を比較すると、マサバの方が20%以上小さく、消化されやすいことが分かった。消化進行状態を表す目安の第一段階であるヒレの消化に関して、マサバの方が速く消化されることを裏付けることができたと考えられる。マサバ一尾の消化実験に関しては、計8回の実験を行ってデータの拡充を図ったが、得られた結果に偏りがあった。特に60分から90分経過後の結果に偏りがあることが、十分な信頼性のあるロジスティック回帰を行う上で障害となった。来年度さらに補足の実験を少数回行う必要がある。
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