研究概要 |
平成22年度では,各月原則として2日間,東海大学所属の北斗(20トン)を用い,駿河湾内の定点で近底層魚類プランクトン調査を実施した.調査側線は三保灯台沖の水深200→500mおよび500→1,000mである.採集には,ろ過効率を向上させた口径1.3mのリングネット(目合い0.53mm)を用いた.北斗による採集方法は過去3年間の努力によって,ほぼ完成した.また,本年度では本学所属望星丸(2174トン)を用い,駿河湾口部(水深約2,000m)で近底層から表層までの採集を行った.採集には,ろ過効率を向上させたアイザックキッド中層トロールネット(目合い0.53mm)を用いた.以上の北斗と望星丸の採集により,近底層の試料を充実させた. これまでの駿河湾の水柱および近底層の採集によって明らかにされた「ソコダラ科ムグラヒゲの卵内発生と仔稚魚の発育」および「セキトリイワシ科ナメライワシとヤセナメライワシの仔稚魚の発育」に関する論文が,本年度,Ichthyological Researchに,それぞれ印刷された.これらの種の初期生活史を解明するには必ずしも標本数が十分であるわけではなかったが,それらの概略を提示することができた.望星丸で採集された魚類を分析したところ,日本初記録種の深海性アシロ科魚類Bassozetus glutinosusを発見した.この標本に,国立科学博物館に保管されていた標本も加えて記載した.これらの標本に基づいて,新称ナンヨウフクメンイタチウオを提唱した.この論文は2011年5月に印刷される.
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