研究概要 |
平成24年度では,各月原則として2日間,東海大学所属北斗(20トン)を用い,駿河湾内の定点で近底層(海底上1-8 m)の魚類プランクトン調査を実施した.調査測線は三保灯台沖の水深200→500 m および500→1,000 mである.本年度の近底層の曳網では,浮上式に加え,着底式の曳網も行った.浮上式については,従来の方法と同様である.着底式による曳網については,新たな深海近底層用ネットを試作した.これは総重量約360 kgのビーム枠(下幅2.2 m×上幅1.7 m×高さ0.7 m)に側長5.5 mのネット(前方4 mが目合3 mm,後方1.5 mが1 mm)を枠の下縁から10 cm上方に取り付けたものである.北斗に加え,10月では本学所属望星丸(2174トン)を用い,駿河トラフ(水深約1,000-2,000 m)において近底層および近底層から表層までの採集を行った.前者では,着底式深海近底層用ネット,後者についてはろ過効率を向上させたアイザックキッド中層トロール(IKMT,目合い2 mmと0.53 mm)を用いた. 平成24年度の主な成果は,クサウオ科スルガインキウオの個体発育に関する論文をIchthyological Researchに公表したことである.本種は個体発育的鉛直移動を行わないタイプの深海近底層種であることが明らかにされた.本成果は近底層調査ならではのものであり,同種の分布が今のところ駿河湾に限られていることからも価値がある. 新たに試作した着底式深海近底層用ネットについては,試験曳網を繰り返すことによって,目的とした採集層(底上1 m以下)の曳網が可能になった.しかし,北斗では問題なく曳網できるものの,望星丸ではビーム枠の強度不足が露呈された.今後,水深1000 m以深での近底層の曳網では,さらに改良が必要である
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