ホタテガイ貝殻粉末をラットに食餌させることにより、白色脂肪組織重量の有意な減少がおこることを明らかにしてきた。また、貝殻粉末を食餌させたラットの白色脂肪組織では、従来、褐色脂肪細胞においてのみ発現し、脂肪を熱に変換する脱共役タンパク質(UCP1)が発現していることを明らかにした。白色脂肪組織でのUCP1の発現は、白色脂肪組織重量を減少させることが良く知られているβ3アドレナリン受容体アゴニストにおいても見いだされていることから、貝殻粉末を食餌することによる白色脂肪組織重量の減少の大きな要因となっているものと考えられた。 貝殻中に含まれるどの因子が関わっているのかを明らかにするため、3T3-L1細胞を用いたin vitro評価系を用い、貝殻から抽出した有機成分の作用について検討を行ってきた。貝殻より抽出した成分には中性脂肪分解活性と脂肪分化阻害活性を見出してきた。しかし、白色脂肪組織においてUCP1を誘導する活性は、in vitro評価系では明らかになっていない。今後、さらに条件を変えて検討を行うとともに、各因子の精製を引き続き行っていく予定である。さらに、貝殻粉末が脂肪組織重量を減少した一つの原因として以下の可能性を考え今後評価を行う。1)膵リパーゼに対する貝殻抽出成分の効果、2)リポプロテインリパーゼに対する貝殻抽出成分の効果、3)3T3-L1細胞を用いたGlut4、UCP1の発現に対する貝殻抽出成分の効果、4)脂肪分解促進因子の探索の過程において見出したグリセロキナーゼの拮抗阻害因子の中性脂肪蓄積にたいする作用、以上の検討を引き続き行い、貝殻粉末の脂肪分解機構について新たな知見を得ていく予定である。
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