水産系廃棄物ホタテガイ貝殻をラットに食餌させることによって脂肪組織重量の減少がおこることを報告してきた。しかしながら、貝殻に含まれる炭酸カルシウムにも脂肪組織重量を減少させる効果が報告されていることから、炭酸カルシウムを除く貝殻有機成分のみをラットに食餌させその効果を検討した。その結果、脂肪組織重量の減少に加え、血中コレステロール濃度の減少作用も見出された。また、この血中コレステロール濃度の減少作用は、ラットの糞中に含まれる胆汁酸濃度が増加していたことから、貝殻中の有機成分が胆汁酸を結合することによって排出させ、その結果として生体内のコレステロール濃度が減少したものと推定された。貝殻有機成分を糖分解酵素、タンパク質分解酵素で処理して単離した食物繊維様物質は、糖とタンパク質成分からなり、この成分に胆汁酸が結合することを確認した。現在このタンパク質、糖の構造についてさらに検討を加えている。一方、貝殻有機成分中に見出した、脂肪細胞の分化抑制因子の作用機構について3T3-L1細胞を用いて検討を行い、分化マーカーであるPPARγの発現量を減少させることがわかった。また前駆脂肪細胞の増殖を抑制することも明らかにした。現在、単離した脂肪分化抑制因子についてその構造と作用機構について検討を加えている。
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