研究課題
海産由来の重要な食品成分でありヒト脳内主要高度不飽和脂肪酸でもあるn-3系ドコサヘキサエン酸(DHA)は、生体内では細胞膜リン脂質に存在し膜機能の調節に重要な役割を果たしているが、虚血性脳(眼)疾患などの中枢神経疾患発症時には、速やかにリン脂質より切り出されて遊離の脂肪酸或いは様々な代謝体となり、新たな生理活性を発現すると考えられている。そこで本研究では、n-3系のDHAとその代謝体について、グルタミン酸をはじめとする各種神経伝達物質の受容体応答に対する影響を確認することによって、DHA並びにその代謝体の栄養学的な意義と応用について貢献するものである。本年度は、脳性麻痺などの患者50名に対し、1年間以上に渡って経腸栄養法によって処置された際の血中脂肪酸組成の変化について、使用された経腸栄養剤中のn-6/n-3との相関関係について調査した。その結果、n-6/n-3比が高い経腸栄養剤を使用した場合の血清中の脂肪酸組成は健常人に比べ、α-リノレン酸、EPA(イコサペンタエン酸)、DHA量が有意に少ないこと、また、n-6/n-3比が低い場合(3.0〜3.94)においてもn-3系脂肪酸がα-リノレン酸に偏っている場合には、血清中の脂肪酸組成は健常人に比べ、EPA、DHA量が有意に少ないことが明らかとなった。一方、n-6/n-3比が3.6程度で、さらにEPAやDHAを含む経腸栄養剤では、健常人と同等の脂肪酸組成に改善することが明らかとなった。以上より、中枢神経系疾患における経腸栄養法の適用では、DHAやEPAなどのn-3系脂肪酸を含有する経腸栄養剤の使用が栄養学的に重要ではないかと考えられた。
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