今年度はまず若年漁業就業者環流構造の類型的・計量的分析として、漁業センサス統計を用い、若年層コーホート増減数・増減率、若年層比率といった指標値を地域別に析出し、その結果を地域ごとに比較検討した。その結果、若年層の増加が顕著であった地域には(1)自営漁業者増加型、(2)雇用従事者増加型、(3)併増型の3タイプがあること、及び時系列的に比較すると大都市周辺部等で、バブル期以降一貫して若年層の増加がみられる地域(これを(4)一貫増加型と呼び、(1)〜(3)とは異なるタイプとして区分した)があること、等が明らかとなった。以上の分析は主に都道府県別に行い、その結果を地域漁業学会で報告したが、さらに細かくは漁業地区別にも分析を進め、主要な都道府県を対象に若年層の増加が顕著であった漁業地区をリストアップした。 さらに以上の分析に基づき、若年層の増加が顕著な漁業地区の中から、典型的と思われる幾つかの地区をピックアップし、現地実態調査、及び若年層へのアンケート・ヒアリング等を実施した。アンケートは1990年以降、地区漁協の正組合員ないし准組合員に加入した者、及び漁協には加入していないが、漁業経営の従事者として新たに雇われた者で、現在漁村に在住している者を対象に実施した。今年度は、岩手県・R地区、宮城県・I地区、広島県・K地区を対象に調査を行い、アンケートも比較的高率で回収されているが、その本格的分析には至っていない。
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