研究概要 |
今年度は若年漁業就業者の環流構造に関する類型的・計量的分析として,前年度に行った漁業センサス統計の分析結果を「近年における若年漁業就業者の動向と地域的特徴」と題して「漁業と漁協」誌に発表した。そこでは若年層が自営形態で増加している地域(自営漁業者増加型)として岩手,愛知,福岡,熊本,沖縄等,雇われ形態での増加が顕著な地域(雇用従事者増加型)として静岡,富山,和歌山,兵庫,島根,鹿児島等,自営・雇われとも顕著に増加している地域(併増型)として北海道,千葉,神奈川,福井,愛媛,広島,大阪等,そして若年層の増加が早い時期(バブル期)から始まっていた地域(早期増加型)として神奈川,愛知,兵庫,大阪,愛媛等があることを明らかにした。 これに基づき,今年度は自営就業者増加型の調査対象事例として沖縄県勝連地区,同知念地区,山口県宇部岬地区,雇用従事者増加型として静岡県網代地区,同北川地区,同大井川地区,併増型として長崎県勝本地区を対象として若年層へのアンケート調査,及び現地でのヒアリング調査等を実施した。アンケートについては一部回収が遅れている地区があるが,ほとんど地区について一時集計が完了している。その結果,漁家子弟のみならず雇用従事者増加型等で多様な出身世帯からの参入が見られること,参入理由として収入以外の要因が予想以上に多くあげられていたこと等,興味深い結果が多数掘り起こされた。今後は対象地区をもう少し拡げるとともに,地域間比較を含めた分析とその公表に注力したい。
|