本研究課題に直接的にかかわる制度的前提である入国管理法が、平成21年7月に国会において改正され、本年7月から新制度が施行されることとなった。さらに、制度改正の具体的内容である各種の省令等は、平成21年秋のパブリックコメント募集を経て、平成21年12月末にようやく一般に公開され、平成22年春にかけて全国各地で説明会等が開催されてきた。以上のような経緯から、平成21年度夏以降、外国人研修生・実習生を受け入れている国内の生産現場や1次受入元となる各種事業協同組合等では、今後の研修・実習事業をどのように遂行すべきかを、あらためて根本的に考え直し、取り組みの仕切り直しを現在迫られている状況にある。 本年度はこのような制度の大幅な変更にともなう混乱の中での調査となったために、昨年度春段階で計画していた調査研究の変更を余儀なくされた。一方で、制度変更にかかわる各種の説明会や公聴会に積極的に参加するなかで、これまで聞き取り調査が難しかった異業種型あるいは広域型の事業協同組合からも聞き取りを実施することができたし、また、表向きの建前とは別な、外国人研修・実習制度に対するさまざまな本音からの利害関心意向にも、触れることができた。 外国人研修生・実習生の受入は、海外農村部等との賃金水準格差をテコとして、1.研修・実習生本人、2.海外の送り出し機関、3.日本側の一次受け入れ機関、4.国内の受入農家等、5各種ブローカ等、関係者全体のwin-win関係構築を構想したものであったのかもしれないが、国境や各種の制度をまたぐ異質な当事者が、互いの本音理解の不可能を前提として、それぞれの思惑から私的利害追求を行ってしまうために、極端な力関係のひずみが、特定の当事者に集中して発生するという構造を抱えている。本年度の調査の中ではその調整の、本質的な困難さをつよく認識する結果となった。
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