研究概要 |
研究初年度となる本年度は,a.関連文献やデータの整理と,b.中国での関連組織および農家への聞取り調査,C.日本での農家調査用の調査票設計,の3つを実施した。 その結果,まず文献・データ整理からは,我が国でポジティブリスト制度が完全施行された2006年5月以降,中国からの農産物輸入は激減しており,例えばキャベツ(白菜等含む)等においては,それまで1万トン/月あった輸入量が現在はほぼゼロになっていることが分かった。また,その要因を統計的に検証した結果からも,ポジティブリスト制度が輸入量に対して有意に影響を与えていることが確認された(p=.011)。一方,冷凍餃子事件など,相次ぐ事件・問題を発生させ,我が国に食品安全性ブームを巻き起こした中国産農産物であるが,その生産現場(山東省壽光市)に聞き取り調査に行った結果,果菜類などの施設野菜において規模拡大や生産技術の近代化が急速に進んでいるものの,安全性確保という面では生産者意識はまだ不十分であることが明らかとなった。また,行政機関に対する視察も行ったが,日本など外部の出荷先に対する体裁をとりあえず整えている段階で,信頼のおけるシステムの確立にはまだ時間を要する状況であると言う印象を受けた。 来年度は,日本の生産者を対象にしたアンケート調査を実施する予定である。調査票の内容は,ポジティブリスト制度が施行されたことによって,どのような変化が生産者意識に生じたのかに焦点を合わせたもので,最終的には本制度の評価を可能とする事を目的としている。
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