研究概要 |
研究3年目となる本年度は,昨年度実施した農業者に対する意識調査をとりまとめ,査読付き学会誌(農業経営学会)に掲載した。内容については,おおむね昨年度の研究実績報告書のものと大差ないが,新たに多変量解析(因子分析およびクラスター分析)による分析を加え,農業者意識とポジティブリスト制度への対応との関連性を検証した。その結果,制度施行によって関連対策を取るようになった農家は,食品安全性への理解が高いだけでなく,本制度がブランド化に繋がると期待するような,いわゆる「前向きな農家」が多いことが明らかとなった。こうした傾向は,特に近隣農家との連携対策において顕著に出ていたことから,一般にコミュニケーションを取ることが苦手といわれている農家のなかにあって,本制度を含む新たな制度や政策への対応において,最も差の出る重要な農家特性であると考えられる。 さらに本年度は,(最終年度となる)来年度の研究に向けて,食品の消費を主とした家計調査(総務省)と農業センサス(農水省)の個票を入手し,データセットの作成を行った。来年度はこのデータセットを使って,ポジティブリスト制度に対する消費者行動および生産者行動の計量分析を実施し,新制度によってどのような構造変化が持たされたのかを需給両側において明らかにする予定である。
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