研究概要 |
研究4年目で最終年度となる本年度は,これまでに実施してきた調査・研究の総括を行う予定であったが,平成23年3月11日の東日本大震災の発生を受け,急遽,4月に追加調査を実施したので,以下その概要を報告する。 震源地から離れた首都圏においては,地震による揺れや津波による直接的な被害よりも,原子力事故による放射能汚染による生活の混乱が大きかった。そこで本調査では,農産物の放射能汚染に対する千葉市在住成人女性(n=350人)の意識について明らかにした。まず,農産物の放射能汚染については「(やや)心配」と回答した者が7割に上っていた。ただし,比較的冷静な態度をとる者も2割ほどいることから,放射能に対する消費者意識は二極化している現状がうかがえる。また,出荷停止解除農産物に対する購買意欲について聞いたところ,「積極的に購入」と回答した者は1割,「普段通り(に購入)」が7割となっていた。一方,「しばらく控える」という過剰な懸念を示した者は13%,「安ければ購入」も6%となっていたことから,ラフな計算ではあるが,廉売されなければ通常よりも需要が2割減少してしまうという深刻な風評被害の現状が明らかとなった。 震災直後,出荷停止や風評被害念から国産農産物が不足することを予想した業者(多くは日本企業)は,中国から通常の1.5~2倍の量の野菜を緊急輸入した。当該措置についての心配度を聞いたところ,「心配」と回答した者が51%,「やや心配」が33%となっており,国産農産物の放射能汚染のケースよりも懸念している者が多いことが分かった。今後,わが国において,(自然災害を含む何らかの事情で)今回と同じような品不足になっても,農産物に関しては輸入品で安易に代替させるべきではないことが示唆されたといえよう。
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