本研究は、拡大途上にあるCSAと衰退傾向にある産消提携との差異を機能・構造的に明らかにし、今日の産消提携の困難とその原因を探求することを目的とする。同時に、地域の資源循環を維持する仕組みとしての有機農業と、地域が支える農業経営の育成装置として展開するCSAの形成・持続条件を明らかにし、特にCSAの形成における食品循環資源の活用、つまり生ごみの堆肥化による産消結合の有用性を明らかにする。そのために、下記の二点の解明が主課題となる。 1)CSAと産消提携における主体条件・客体条件の差異 有機農産物の市場流通体制が整備された後のスイス・米国でCSAが拡大し、有機JAS制度による有機農産物の市場展開に並行して産消提携が衰退を続けている日本とではその機能的差異は明らかである。産消提携の理念・機能がCSAにおいてどのように受容されたかを分析することによって、なお普及途上にあるスイスのCSAと、衰退傾向を続ける日本の産消提携との主体的もしくは客体的条件の差異を明らかにする。このことは、日本の有機農業展開の問題点を明らかにするだけでなく、地方行政が取り組もうとしている「地域が支持する農業経営の育成」においても有用な知見となる。 2)CSAの形成条件の一つとしての食品循環資源を利用した農産物の有効性 コミュニティ視点からの産消関係の再構築には、有機農業の有する資源循環機能が期待される。食品廃棄物の生産地還流とその堆肥化による有機栽培という産消連携の実践は、長井市のレインボープラン、群馬県甘楽町の有機農業研究会と東京都北区の学校給食、埼玉県小川町の「NPOふうど」などが知られているが、三重県の菜遊ファームでも30年にわたる実践が継続されている。これらの事例において、いわば食品廃棄物のリサイクル農産物がどのように受容されるか、それによる生産者と消費者との関係はコミュニティ形成にどのように影響するかを明らかにする。
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