20年度は契約取引の実証分析を行ない、以下のような新たな知見を得た。 1.小規模農家ではJAと消費者というチャネル構成が太宗を占めている。ただし、消費者はJAの従属的な位置づけとばかりはいえず、既にJAと並ぶチャネル構成の核となっている。流通自由化後にJA系統率が5割を切るところまで減少したが、これは、小規模農家を中心とした消費者への転換によるところが大きいといえる(“第一のJA離れ")。 2.一方で、大規模な農家になるほどチャネルが多角化し、JA、消費者を核としながらも、JAへの販売が切り崩される形で他チャネルへの販売量が増加してきている。3チャネル以上(主にJA、消費者、その他という組み合わせ)へと多角化している農家は全体の8.1%に過ぎないが、その出荷量は全体の28.1%と無視しえない大きさになっている。 3.“第一のJA離れ"では、農家にとってそれほど流通機能負担の必要のない消費者直売がJA離れの主流となった。これに対して、農家が大規模化すると大ロットでの安定した取引の可能性が生まれ、法人化すると、資金調達や取引相手からの信頼の獲得などが容易になる。こうして農家による様々な流通機能負担が可能となり、多角的なチャネル選択の原動力となる(“第二のJA離れ"の可能性)。 4.ただし、大規模層の中でも、認定農業者または法人であれば、JA出荷割合を高めることが分析から示された。今後、JAが個別の法人立ち上げを支援していく中で、法人の安定経営の柱として「JA」を位置づけさせていくことが重要である。それと同時に大規模化や法人化の進展による「飲食業者」「小売業者」「農産物直売所」への販売割合の増加は食い止めることが難しいと思われる。法人化支援と同時に、法人のこれら系統外販売にいかにJAが介在し、役割を見出していけるかが重要である。
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