研究概要 |
2008年度は、人口規模が大幅に縮小している中で、いかに中山間地域等直接支払制度が機能し得るかについて分析を進めた。当該年度は、新潟県、山形県、長野県、岐阜県、島根県、鹿児島県、京都府の7府県にわたる実態調査を行った。まず、各県庁,府庁で中山間地域等直接支払制度の担当者から当該制度が人口的限界の中でどのような隘路に陥っているか、その展望や萌芽的な実態についてヒアリング調査を行った。ついで各県内の典型的な事例を各市町村を実態調査することで当該制度の限界と隘路脱出の方向を検討した。また中山間地域等直接支払制度を利用しながら展開を遂げ地域資源管理の担い手として成長している事例の経営管理論的実態を調査した。つぎに、山間地という条件不利な中にあってその不利性を逆手に取った経営展開を遂げている有限会社・農業生産法人「三栄農産」の実態調査を通して、標高差を生かした規模拡大可能の可能性について作業管理論的視座から分析を行った。またこうした個別型経営の展開が地域農業の担い手としてどのような意義と限界をもつかについても分析を行った。また島根県の中山間地域研究センターの協力のもとに県内の弥栄村での地域営農集団の耕作可能上限規模に関する検討も行った。 つぎに、2008年度秋にはイギリスのパートナーシップ型地域再生主体に関する実態分析を行った。ミッドランド内の各地域やロンドンなどでのグラウンドワーク・トラスト(GWT)の調査である。そこで公民パートナーシップの組織論、経営管理論的分析が中心であった。こうした研究は、わが国中山間地域の再生において自治体に代わる新たな地域経営主体のあり方を展望する上で欠かせないからである。自治体が要となり、地域内外の関係主体の諸力を結集するためのシステム形成問題の比較研究を行った。
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