わが国中山間地域における地域営農システムの再構築に関する研究では、新潟県上越地域や福島県昭和村などにおける実態分析を行った。そこでは、中山間地域等直接支払金の担い手に対する集中的運用、および市町村農業公社が規模の不経済を回避するための仕組みづくりなどが主な焦点となった。前者の担い手とは、旧村レベルを範域として傾斜地水田農業の基幹作業部分を担う地域営農主体であり、自治体やJA出資型の法人も含まれる。こうした主体に対してコミュニティレベルでの支援として中山間地域等直接支払金の集中配分の意義と限界について分析した。後者に関しては、集落レベルで公社への賃貸希望農地をおおよそ3ha程度に集積させることを公社の受け入れの条件とする方式の意義と限界を分析した。さらにこうした地域営農主体を日本農村型の社会的企業として位置付ける作業も行われた。そこでは、社会的企業としての努力限界、コミュニティのサポートの意義と限界、さらに公民連携の意義について段階的に整理した。つぎにEUとの比較検討についてはイギリスの農村社会的企業に関する分析を行った。
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