研究課題/領域番号 |
20580252
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
岩崎 正弥 愛知大学, 経済学部, 教授 (40221791)
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研究分担者 |
三原 容子 東北公益文科大学, 公益学部・社会系, 教授 (90212240)
伊藤 淳史 京都大学, 農学部, 助教 (00402826)
舩戸 修一 法政大学, サステイナビリティ研究教育機構, 研究員 (00466814)
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キーワード | 農本思想 / 社稷 / アジア主義 / 帰農 / 庄内地方 / 石黒農政 / 地域づくり / アグラリアニズム |
研究概要 |
当該年度は研究成果を最終報告書として取りまとめた(『農本思想の現代的意義に関する研究』として印刷製本)。農本思想の定義-農(農業・農村・農民)に特別の価値を認め、その価値を追求・実現しようとする思想-を踏まえ、その多様性(理念・運動・政策)、戦後との断絶と連続、現代の状況への示唆を、「対抗性」(市場経済への対抗理念としての農)という視角から明らかにした。その結果、1)農本思想は1945年で終息したわけではないこと、2)戦後も農村教育や農政の一部に、また人的にも継承がみられること、3)日本国内だけの特殊な思想だったわけではなく、中国の村治運動やアメリカのアグラリアニズム(agrarianism)との関連で農本思想の広がりを確認できること、4)地域づくりや帰農(有機農業)において現代でも農本思想の理念がみられること、5)人間社会の根源を問う「社稷」理念は現代においてこそ再評価されるべきこと、などが明らかとなった。本研究は従来の農本思想研究史を踏まえ、1945年で終わっていた研究史の限界を乗り越え、現代の農業・農村問題と接続することを研究目的に掲げていた(ただし現代農業・農村問題への直接的・具体的な提言自体を目的としていたわけではない)。戦前から戦後を経て現代に至る長期的な時間軸の中で農本思想のもつ意義を考察することはできたと思われるが、以下の点が課題として残った。1)海外との比較研究(例えば稲作・米食文化圏のアジアの中の農本思想)、2)神道に根ざした日本人の心性・自然観との関連、さらには、3)いわゆる多面的機能論にとどまらない農の存在論の提示、などである。
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