第1に、日本農学原論に関する研究史整理を行った。また、関係する図書や史料の収集を行った。今後とも引き続きすすめて、日本農学原論の基本的な体系・見通しを確立する。 第2に、東京農業大学図書館を調査し、保管されている明治20年代から戦前までの学生卒業論文が閲覧可能であること、データベース化が大正期まですすんでいる事を確認した。これらの卒業論文を検討分析することで、明治〜昭和戦前期の全国の地主子弟の農学的関心を明らかにすることが出来よう。 第3に、農山漁村文化協会図書館を調査し、東京大学名誉教授川田信一郎氏が収集した戦前・戦後の民間農法に関する史料を調査した。これらを検討分析することで、大学を中心とするアカデミズムの農学とは異なる在地での農学の動向を明らかにする事が出来よう。 第4に、東北農村を大阪経済大学藤本高志教授、渡邉正英准教授と調査し、年配の農家から戦前・戦後の農村状況の聞き取りを行った。これに関しては、山形県村山市の農家門脇栄悦氏の協力を得た。また、奈良県大和郡山市の農家堀内金義氏ら数名と毎月農家懇談会を開催し、現在の農業問題に関し検討を重ねた。これらの調査研究により、現実の農家の心情にあった日本農学原論とは何かを考えていく事が出来よう。 今年度は以上の調査研究活動を行ったが、残念ながら具体的な研究成果を発表するまでには至らなかった。次年度には、研究発表、論文執筆を行う予定である。
|