研究概要 |
本年度は,流れ場環境り違いによる河川生息魚の遊泳能力に関する研究として,1.シロウオの遊泳能力に関する実験,2.ヤマメ稚魚の遊泳能力に関する実験,3.イワナ稚魚の遊泳能力に関する実験,4.岩木川取水堰魚道(青森県弘前市)で野生のウグイの遊泳能力に関する実験,を実施した.いずれの遊泳実験も実験装置を現地河川およびフィールドに設置し,自然河川水を実験スタミナトンネルにそのまま「かけ流し」するシステムで行った.本年度では以下の魚の遊泳能力に関する貴重な知見を得ることができた. 1.シロウオの遊泳速度に関する実験 シロウオが遡上してくる青森県蟹田川において,内径5.4cmの挿入式スタミナトンネルを用いて天然のシロウオの遊泳実験を現地で実施し,その遊泳速度について検討した.管内流速条件は21cm・s^<-1>~56cm・s^<-1>である.実験の結果,体長4cm台78尾(平均体長4.4cm)の管内遊泳速度と遊泳時間に関する遊泳曲線,および遊泳能力の指標値SAI値が求められた.管内流速が約50cm・s^<-1>では突進的に遊泳する距離はかなり短いことがわかった.また,極めて貴重な1尾の尾ひれの動きを調べることができた. 2.ヤマメ稚魚の尾ひれの動きと遊泳速度 現地河川の魚道地点で長方形断面のスタミナトンネルを用いて養殖産のヤマメ稚魚(全長:5.0cm~8.5cm)の遊泳実験を48cm・s^<-1>~96cm・s^<-1>の流速範囲で行い,高速で遊泳する際の尾部の運動を高速度カメラで撮影し,屋ひれの動きと振幅,尾ひれの振動数と遊泳速度の関係について検討した.その結果,(1)ヤマメ稚魚は尾ひれの振動数を21.1Hz~33.5Hz,84cm・s^<-1>~176cm・s^<-1>の遊泳速度で遊泳し,ヤマメ稚魚の尾ひれの振幅と全長との比は,尾ひれの振動数や遊泳速度が増加しても一定でその値は0.11であったこと,(2)尾ひれの振動数と遊泳速度との関係について,V-V_0=k_2L(F-F_0)で整理し,いままで未知であった尾ひれの振動数が大きな範囲でk_2=0.74を得たこと,などを明らかにした. 3.イワナ稚魚の尾ひれの動きと遊泳速度 青森県南津軽郡西目屋村の養殖場において長方形スタミナトンネルを用いてイワナ稚魚が高速で遊泳する際の尾部の運動と遊泳速度との関係について検討した.管内流速66cm・s^<-1>~102cm・s^<-1>で遊泳したイフナ稚魚13尾(平均全長8.2cm)の遊泳速度と尾ひれの振動数は,105cm・s^<-1>~166cm・s^<-1>,18Hz~29Hzであった.ヤマメ稚魚と同様に,尾ひれの最小振動数とその最小遊泳速度の概念を導入して整理し,遊泳速度と尾ひれの振動数との関係式を得た.
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