研究概要 |
頭首工の計画・設計にあたっては,設置予定地点付近の河道の河床高と河床形状との関係,特に,河床の砂礫堆形成との関係を的確に把握することが重要である.平成20年度,21年度においては,主として堰下流河床洗掘による被災防止に対する下流護床工の効果を現地調査と水路実験によって検証してきた.堰下流に深く長く護床工を配置することで洗掘軽減効果が認められることが明らかになり,設計上の大きな指針を得ることができた. 平成22年度においては,次の2つの課題を中心に調査と模型実験に取り組んだ. (1)可動堰と固定堰を組み合わせた複合堰の問題 砂礫堆との位置七第にとって堆砂と洗掘の現れ方が大きく異なる.砂礫堆の寄洲部分が敷高の低いとの動堰部分を覆うと,ゲート閉鎖の障害となる堆砂が発生するうえ,固定堰下流で大きな河床洗掘が発生する.砂礫堆にとる横断形と堰の構造を合致させることの重要性が明らかになった.堰上下流区間の河床高が低い場合には,堆砂問題は発生しない代わりに,堰の上流・下流ともで河床洗掘を生じ,災害防止対策が必要であることが分かった. (2)引き込み式魚道の被災可能性 魚類の遡上を容易にするため,引き込み式魚道が設置される場合が増えている.魚道出口が堰の上流側に突き出した形式になるので,その周辺河床の洗掘被害が懸念された.検討対象として取り上げた寒河江川昭和堰について水理模型実験を実施したところ,幸いにもこの堰の場合は,安定した砂礫堆上の適切な位置に魚道があるために大きな問題が発生しないことが明らかになった.砂礫堆との位置関係が不適切な場合には,洗掘あるいは堆砂によるトラブルが発生することも分かった. 本研究のまとめとして,この3年間の研究成果に基づいて,水理学関係の研究者や実際の堰管理者の方々と意見交換し,頭首工の計画・設計における改善点を明らかにした.
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