研究概要 |
平成21年度における実績は以下の通りである. 1.モニタリング:山林流域におけるフラックスモニタリングに関しては,前年度より引き続き,懸濁態の項目として濁度,溶存態の項目としてカリウム,塩化物,ナトリウムイオンを10~15分間,隔で観測にしている.溶存態項目の観測に関しては定量性の改善を実施した. 2.負荷量の区間推定法について:本年度は濁度及び濁度から回帰により推定された懸濁物質濃度の負荷量について区間推定を行った.当該山林流域の濁度データは,低流量時には河川水が清浄なため観測値が0となる,典型的な"打ち切りデータ"である.このため,負荷量の推定法として打ち切りデータに対応したTobitモデルにより回帰を行った.意外にも,Tobitモデルによる推定値の方が著しい過大推定となっているという結果を得た.これは当該データセットの,打ち切りデータが90%以上を占めるという性質に由来するものであろう.負荷量の計算方法としては,打ち切りデータを解析に用いない通常のべき乗型LQ式による推定値が良い推定結果を与えた.またこの値は真値に対して過小推定となるという従来の知見とも一致していた.次に,懸濁態成分の負荷推定においては,標本の抽出方法であるサンプリング戦略が重要であり,等間隔サンプリングでは打ち切りでないデータを十分な量収集するのが困難であった.このため負荷推定量に応じた標本採取法であるSALT法,及びその改良法であるPSALT法について検討を加えた.この結果,PSALT法でより適切な推定値を得ることができることが判った.しかしながら,真値を信頼区間内に捕捉する割合であるカバー率は90%程度と,想定した信頼確率95%に及んでいない. 次年度は,溶存態・懸濁態に関するこれまでの知見を併せて.公開に向けたプログラミングを実施する予定である.
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