研究概要 |
平成22年度の実績は以下の通りである。 前年度に定量精度が向上した濃度計算プログラムにより,2009年度~2010年度の溶存項目(カリウム,ナトリウム,塩化物イオン)の10分値水質データを計算し,これを山林集水域の期間中の総流出負荷量の区間推定に供した。これとともに,同期間の10分値の濁度から現地調査により換算した懸濁物質濃度を対象とした。 溶存成分については,定期サンプリングとUSGSのLOADESTIMATORの7パラメータモデルによるレイティングカーブ法(バイアス修正)がもっとも良い区間推定を与えた。区間推定はブートストラップ法による。7パラメータモデルは重回帰モデルであるため変数選択も検討したが,最終的にオリジナルモデルでもっとも説明変数の多いモデルを採択し,かつバイアス修正法としてQMLE, MVUE, Composite法のいずれかを組み合わせると,サンプル数に関わらず良い結果を与えた。しかし,ナトリウムについてのみ特定のサンプリング間隔での区間推定の信頼性が低下していた。この問題を改善するためには,レーティングカーブの回帰式などの自由度を増大させる必要があると推察された。 懸濁態成分については,観測データの96%が濃度ゼロの打ち切りデータであり,通常の定期サンプリングでは負荷量推定が困難である。このため前年度と同様SALT法により,負荷量の区間推定を行った。SALT法の負荷推定への最初の応用者であるThomasの方法,べき乗型回帰式およびそのTobitモデルをレーティングカーブとした方法により負荷量の区間推定をしたところ,バイアス修正を施さないべき乗型回帰式によるものが最良の結果を与えた。これは溶存態項目とは全く異なる傾向であり,おそらく多量の打ち切りデータのためであると考えられた。
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