研究概要 |
本研究は,軟弱地盤上に施工された農業土木構造物(干拓堤防など)の維持管理を目的とした最適設計に関するものである.軟弱地盤上の構造物は,改修等で載荷が生じた場合,長期の圧密沈下を起こすことが予想される.特に,長期残留沈下の予測を適切に行うことは非常に重要である.ここでは,長期残留沈下予測を適切に行う簡便な手法を開発しようとし,これに基づいて,供用期間内のライフサイクルコスト最小化に基づく最適設計問題を信頼性設計理論の立場から議論しようとするものである. 21年度は,昨年度試作した試験機を用いて圧密試験を実施した.20年度は,連結型圧密試験用セルを4機試作しており,これらを連結することにより,供試体内部のひずみを4カ所,間隙水圧を4カ所で計測した.試験材料として,カオリン粘土と海成粘土を用いているが,前者は低塑性,後者は高塑性の性質を有する.今回は,厚さ2cmの供試体を4連結した場合(層厚8cmの試料に対応する)と2連結の場合(層厚4cm)について実験を行った.とくに,次の2点について考察を行った. (1) 供試体内部の時間-ひずみ曲線,時間-間隙水圧消散曲線,e-logp曲線を比較することによって,粘性土のひずみ速度依存性挙動を確認する. (2) ひずみ速度依存性挙動を考慮したモデル化を行う. (1) に関しては,各層ごとの挙動を比較した結果,e-logp曲線の形状は,排水面に近づくに従って,ひずみ速度の影響が大きくなることが分かった,また,時間-沈下曲線から推定される圧密の進行は,時間-間隙水圧曲線から推定される圧密の進行より遅くなる傾向が明らかとなった.これは,沈下が供試体の平均的な挙動で決まるのに対して,間隙水圧は,局所的な水の流れに影響されためと考えられる.(2)について,粘性土の二次圧密を表現できるモデル化を行っており,時間-沈下挙動をが適切に模擬できることが明らかとなった.ただし,時間-間隙水圧曲線を表現するためにはさらにパラメータを追加する必要がある.
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