研究概要 |
本研究は,恒常的な取水制限を強いられている矢作川流域での水需給調整に当たって,冬季代かき乾田直播栽培の導入が節水型水利システムの構築や雑草抑制ならびに水質保全効果を目指した新しい水管理技術の構築にどのように貢献するのかを明らかにすることを目的とする。一方,温暖化に伴う気温の上昇によって水田内の水温が上昇し,水稲の無効分げつが進み収量や品質の低下を招くことが懸念され,この対策として矢作川流域では深水灌漑と水管理労働の省力化を図るための無落水灌漑が普及している。このような深水無落水灌漑による水管理が用水量や水温,地温,水質などに及ぼす影響の検証が十分行われていないことから,愛知県三河地方の冬季代掻きV溝乾田直播栽培水田で行われている深水無落水灌漑の実態と圃場内での湛水動態,水温,地温,水質環境を明らかにするものである。 平成20年度に行った研究において,冬季代掻き乾田直播栽培水田での深水無落水灌漑による圃場環境を調査した結果,日減水深は灌漑期が6〜12mm/d,冬季代掻き後の湛水期が5〜7mm/dで,一般的な移植水田に比べて灌漑期間中の水田用水量は少ないことがわかった。一方,水温は表層が21〜37℃,田面が21〜32℃,地温は20〜28℃の範囲で変動し,高気温時でも田面水温は水稲生育における適正な温度を維持していることがわかった。さらに,気象,水温,地温の観測結果および水稲成育諸元の観測結果から地温推定式を構築した。水質はCODとT-Nの濃度が水尻で農業用水水質基準値より若干高い傾向を示したが,水稲成育に大きな影響を及ぼすものではなかった。
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