研究概要 |
本研究は,恒常的な取水制限を強いられている矢作川流域での水需給調整に当たって,冬季代かき乾田直播栽培の導入が節水型水利システムの構築や雑草抑制ならびに水質保全効果を目指した新しい水管理技術の構築にどのように貢献するのかを明らかにすることを目的とする。一方,温暖化に伴う気温の上昇によって水田内の水温が上昇し,水稲の無効分げつが進み収量や品質の低下を招くことが懸念され,この対策として矢作川流域では深水灌漑と水管理労働の省力化を図るための無落水灌漑が普及している。このような深水無落水灌漑による水管理が用水量や水温,地温,水質などに及ぼす影響の検証が十分行われていないことから,愛知県三河地方の冬季代掻きV溝乾田直播栽培水田で行われている深水無落水灌漑の実態と圃場内での湛水動態,水温,地温,水質環境を明らかにするものである。 平成21年度に行った研究において,深水無落水灌漑水田では最大23cmと掛け流し水田の2倍の湛水深の水管理が行われ、これによって最高水温や最高地温が低く維持されていた。また、圃場内の水質はCOD、T-N濃度が高くなる場合があったが、深水無落水灌漑は灌漑期間中に圃場内での高濃度の貯留水が圃場外へ排出される頻度はかなり少なく、環境に配慮した水管理技術であることが明らかになった。
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